Priocnemis irritabilis Smith, 1873 トゲアシオオクモバチ

Priocnemis irritabilis

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Priocnemis irritabilis

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里山の林道で黒い蜂がクモを運んでいました。不用意に近付いたら蜂は驚いて獲物を地面に残したまま飛び去ってしまいました。蜂が戻るまでの間に獲物を検分すると、

・素人目にはフクログモ科のクモ?(全く自信ありません)。肝心の頭胸部と眼列の写真をちゃんと撮る前に蜂が戻ってきてしまいました。

・腹面に外雌器が認められるので♀成体だと思います。

・狩りのシーンは見ていませんが、完全に麻痺しています。

・歩脚は切り落とされていません。

辛抱強く待つと蜂が戻って来ました。苦労して落し物を探し当てると、運搬を再開。

・クモの糸疣ではなく歩脚の根元を大顎で咥え

・後ろ向きに引きずりながら歩いて運びます。

道を横切った後、道端に積もった落ち葉の上をしばらく進んでから休憩しました。落ち葉の下にクモを置いた(隠した?)まま獲物を残して辺りを偵察して回ります。クロベッコウだとするとどこかに巣穴を掘って貯食しクモの体に産卵するそうです。しかし、いくら待っても進展がありません。それともいつの間にか落ち葉の下で適当な既存坑を探してクモを隠し、産卵を済ませたのだろうか。(さすがに穴掘り行動を見落としたはずはありません)

夕方で暗くなってきたので痺れを切らして観察を打ち切り、蜂を採集して帰りました。クモの方は油断していたら落ち葉に紛れてしまい、残念ながらどうしても見つけられませんでした。

獲物のクモはヤマヤチグモ♀の可能性が高いだろうとクモ屋さんにご教示頂きました。

(写真から判断して,本種はPriocnemisトゲアシクモバチ属のUmbripennis亜属に属することは間違いありません.トゲアシオオクモバチP. irritabilis Smith, 1873かコトゲアシクモバチP. atropos Smithのとちらかでしょうが,大きさから,前種とみてさしつかえないと思います.本亜属は初春から初夏までしか活動しません.写真を撮られたのは5月末らしいので,その点からも間違いないでしょう.他に何かご質問がありましたら,どうぞお尋ねください.(上記2種とも北隆館の新訂原色昆虫大図鑑に入れておきましたので,機会があれば,ぜひご覧ください.)

トゲアシオオクモバチの属するPriocnemis属,Umpripennis亜属の行動習性としては,北米の1種が土中に複独房巣を掘ることが知られています.おそらく,トゲアシオオクモバチも同様な巣を造ると推定されます.となれば,ハチはクモを運搬後,それを一時的に放置して巣に戻り(巣は狩りの前にできている!),独房を点検した後(あるいはさらに独房づくりをするかもしれない?),再びクモのところに戻り,このクモを独房に搬入するものと思われます.北米の種では,その巣の入り口は落ち葉の下にあって,非常にわかりにくいそうです.また,巣の構造を調べるのも難しそうです.が,次の機会にぜひお調べになりませんか.必ず新発見になります.(ハチと獲物は必ず標本として残してください.)

後脛節の鱗片状突起は穴堀りの際に土を押し出す,またはそれを坑道壁に押し付ける際に使われるものと推定されます.

カビが生えてしまうくらいならば、こちらにお送りいただければ、貴重な証拠標本として作成し、大学の標本庫に保管したしますよ。とりあえず、消毒用アルコール(70?80%エチルアルコール)で保存する手もあります。きれいな展翅標本にする必要はありません。ただし、アルコール液が失われないよう、液体専用の管瓶が必要になります.貴重な観察記録を大いに期待しております. by 清水晃様)

2010年5月中旬 山形県/撮影者:しぐま様


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