刺されたら

これらのハチのうち、私たちが刺される可能性が高いハチはどのハチでしょうか。

スズメバチ類やアシナガバチ類、ミツバチ・マルハナバチ類などは、社会性のハチといって、女王蜂、働き蜂、オス蜂がいっしょに暮らしています。

 

冬越しした女王蜂は春に単独で巣を作り、産卵をして働き蜂(♀)が生まれます。

働き蜂が生まれると、その後は女王蜂は産卵に専念し、働き蜂が育児やえさ運びを行います。

その後働き蜂により巣は拡大され、秋に最大となります。

秋になると新しい女王蜂とオス蜂が生まれ、交尾して、新しい女王蜂だけが冬越しをします。

働き蜂やオス蜂は死んでしまい、巣は空になって2度と使われることはありません。

ただし、ミツバチ類は集団で冬越しし、交尾は4~6月に行われます。

 

働き蜂は外敵から巣を守るため、近づくものに攻撃をします。

攻撃は、産卵管から変化した毒針で行うため、刺すのはメスだけです。

ミツバチ類やマルハナバチ類は、巣に近づいても刺激しなければ刺されることはないのですが、スズメバチ類アシナガバチ類は攻撃性が強いため、近づくことも危険です。

 

では、ハチに刺されたときにはどのような症状が出るのでしょうか。

その症状は症状の重傷度によって4段階に分類されます。

 

ハチ刺傷の症状の分類
I 局所反応 刺された部分に通常の刺された傷より高度の痛み、かゆみ、腫れはあるが、3日以内に消失する。
II 軽度全身反応 全身にジンマシンが出現し、2~3日続く。とくに、軽度の悪心、嘔吐、寒気、動悸、不安、息苦しさを伴う。
III 重度全身反応 IIの症状に、意識障害が伴って、ショック症状を呈する。
IV 遷延型局所反応 刺された部分の腫脹硬結または浮腫が4日以上持続する。

 

また、アレルギー反応は局所アレルギー反応全身性アナフィラキシーショック反応に分けられます。

局所アレルギー反応は、刺された部分の腫れが広範囲に数日続くもので、例えば指先を刺され、ひじまで腫れてしまうことがあります。

全身性アナフィラキシーショック反応は刺されたあと、数分から15分程度で起きますが、重症であるほど出現時間は短くなります。

全身にジンマシンが出現し、悪心、嘔吐、寒気、動悸、血管浮腫、声門浮腫、呼吸困難、血圧低下、意識消失を示し、重症になると、気道閉塞、循環虚脱、不整脈等で死亡に至ります。

 

アレルギー反応は、1回目より2回目、2回目より3回目のほうが強く症状が出ることがあります。

前回刺されたときに局所アレルギー反応が出た人は、次回刺されたときに全身性アナフィラキシーショック症状が出る可能性があります。

 

では、ハチに刺されないようにするためにはどうすればよいでしょうか。

一般的に次のような方法が提唱されています。

 

ハチ刺傷の予防

蜂の巣に近づかない。

家屋内に営巣させないため穴をふさぐ。

肌に密着する衣類を着て、服の下にハチが入らないようにする。

白っぽい服を着る。

花模様のある服や黒い服を避ける。

芳香のある化粧品を避ける。

戸外で甘味物を食べない。

自動車の窓を開け放しにしない。

ハチに刺されないために体に止まらせない(止まると刺すので)。

洗濯物を取り込むとき、ハチを紛れ込ませない。

不必要なときに、藪の中に入ったりしない。

見張り役のハチを見かければ、巣が近いことを知る。

 


参考文献

  • 朝比奈正二郎他:原色昆虫大図鑑III 北隆館:1965
  • 松浦誠・山根正気:スズメバチの比較行動学 北海道大学図書刊行会:1984
  • 山根正気:日本のアシナガバチ 採集と飼育 第52巻6号:1990
  • (財)日本自然保護協会:野外における危険な生物 平凡社:1994
  • 伊藤誠夫:マルハナバチの経済学 文一総合出版:1991
  • 日高敏隆他:日本動物大百科 第10巻昆虫III:1998
  • 福田健他:アレルギーの臨床 特集昆虫アレルギー No.252 1999.9(10) 北隆館:1999