Passaloecus sp. Passaloecus属の一種

Passaloecus sp.

Passaloecus sp.

種不明その1。里山で杉林の中にある小さな小屋の板壁に小さな節穴?が開いていました(直径2.5mm)。オレンジ色の物質が穴の周囲に塗られており、不思議なことにそれは日を追うごとに量が増えていきました。(最後は板壁からしとどに滴り落ちるまでになりました)指で触れてみると新鮮な樹脂だと判明しました。(杉のヤニ?)

年季の入った板壁から樹脂が分泌されるはずがありませんから、何者かが集めて来ていることになります。その正体は小さなハチでした。どうやらこの節穴に営巣しているようです。生態を観察しようと採集を先延ばしにして一月ほど定点観察していたら、いつの間にか姿が見えなくなってしまいました。

(画像から翅の亜縁室が2個、腹柄はないように見えます。その特徴からイスカバチ属の一種(Passaloecus sp.)だと思われます。イスカバチは、材の細い虫孔や屋根のカヤのずい孔などを利用して造巣し、各幼虫室の仕切り壁には一般に杉ヤニや松ヤニが使われるそうです。狩るのはアブラムシです。

Passaloecusで検索したところ、このようなウェブサイトを見つけました。リンク先のページ中程の画像群の一番左上をクリックしてみてください。ちなみにドイツ語のページです。検索でヒットした画像には、「Aphid Buster Passaloecus Nest」という画像もありました。イスカバチでアブラムシの駆除をしているようです。資料によると1室に20~50集めるとありますから、これだけ大量に営巣するとアブラムシ退治にかなり効果がありそうですね。 by 管理人)

残念ながら今回は狩りや貯食シーンは見ることができませんでしたので、いつか観察してみたいものです。人の気配にとても敏感な蜂で、なかなか接写させてくれませんでした。専ら離れた位置から観察していたのですけど、私の第一の興味は穴の周囲に塗られた樹脂の意味についてです。オレンジ色の樹脂を口に咥えて運ぶところはなんとか動画に撮れました。添付写真は、同じ巣穴が最終的にこうなったという写真です。おそらく樹脂を集めて巣材にしているのだろうと予想は付きましたが、帰巣の際に入り口を汚したにしては塗り方が丁寧(戦略的)です。どうやらこの樹脂は、辺りを徘徊するアリや巣穴を探して飛来する借坑性のハチに対して、忌避効果がありそうだという印象を受けました。

↓教えてもらった英文サイトにまさにその通りの記述がありました。

>The female Passaloecus first clear debris from the tunnel with their mandibles, then visit trees for resin droplets, and spread a ring of sticky resin around the nest entrance, to prevent other predatory insects from entry.

2010年7月上旬 山形県/撮影者:しぐま様


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