Irenangelus puctipleuris Wahis, 2007

Irenangelus puctipleuris

Irenangelus puctipleuris

Irenangelus puctipleuris

5月中旬、ヒメベッコウ作と思われる(シロハヒメクモバチと判明)泥巣を発掘しました。育房から採集した6個の繭を個別に飼育してみたところ、6月中旬になって2匹の寄生蜂が羽化しました。

泥巣は里山の参道でお地蔵さんの後ろ側にありました。羽化孔が一つ開いているのはおそらく昨年のもので、自分が生まれた泥巣の隣に育房を増設したのではないかと想像しています。前蛹の状態で越冬したのでしょう。中に蛹が透けて見える繭もありました。育房内に貯食物は殆ど残っておらず、クモの大顎だけ見つかりました。

(写真の種はIrenangelus puctipleuris Wahis, 2007に間違いありません.この種は私どもの論文 Shimizu, A. & Wahis, R. (2007) Journal of Hymenoptera Research, 16: 311-325で,新種として記載したものです.別の方からも,ヒメクモバチ(ヒメベッコウ)の巣から羽化したとの情報をいただいています.本種はインド,マレー,フィリッピンなどから日本(本州の福井県まで)分布しています.東南アジア産の標本を多数調べましたが,日本産のものと形態学的に区別することができず,同種としました.南方系の種と考えてよいと思います.Irenangelusヤドリクモバチ属はCeropalesヌスミクモバチ属に近縁です.

ヤドリクモバチが寄生するチャンスは,ヒメクモバチがクモを運搬している間か,おっしゃるように,ヒメクモバチが貯食・産卵した後に最初の泥玉を運んでくるまでの一瞬しかないように思います.寄生のタイプは”追い剥ぎー托卵”型で,寄主が運んでいるクモの書肺の中に産卵するわけです.ヒメクモバチがクモを運搬している間は,そのハチが,歩脚を切断したクモの腹面にまたがっていますので,ヤドリクモバチが産卵するのは難しそうです.そうなると,ヒメクモバチがクモを泥つぼ(独房)に搬入した後のわずかなすき間に産卵する可能性が高いです.次の機会にぜひお調べになりませんか.記録はビデオカメラの方がよいです.産卵の瞬間はおそらく1秒以内と思われ,カメラですと,この,きわめてまれな幸運の,瞬間を逃すおそれが大ですので.この記録はきわめて貴重なものになります. by 清水晃様)

2010年6月中旬 山形県/撮影者:しぐま様


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